ダラット、花と歩けば。
ダラットの町について。
ホーチミンではどこにいっても原付の大河、歩道は停めてある原付と商売人たちで歩くことさえままならない。良い意味で言えば賑やかだし、悪い意味ではやかましい。ダラットに来ても例外なく原付はたくさん走っているのだが、あのホーチミンのような「けたたましさ」はそれほど感じられない。
それはおそらく街の中心に広がる神秘的なブルーを讃えるダラット湖のおかげだろうか。ここに佇むと不思議と心が落ち着く。ダラットは花と緑の街として知られていて、ここにたどり着くまでにも幾度と遭遇したが、観賞用の花の栽培が盛んであるという。運よく「旧正月」を前に控えたダラットでは、街の市場や湖の周りで正月の飾りつけ用であろう、園芸市がどこかしこで開かれ、原付の荷台に器用に花木を載せたオジサンたちが忙しく街を駆けていた。またちょうどこの頃、濃いピンクの桜が満開を迎えており、多いに目を楽しませてもらった。
フランス統治下時代の名残か、町並みはヨーロッパのような趣を感じる建物もしばしば。町の中を自転車で散策するだけでも十分楽しめるが、それだけではダラットの魅力の一部しか知らないにすぎないよう。友達の紹介で現地の方と知り合う機会を得た。その方のバイクの後ろに跨り、自分では思いつきもしない山の上の道を案内してくれた。僕たちを載せた小さなバイクは、うなりをあげながらも頑張って山の斜面を駆けあがってくれた。松林が横を流れているのを過ぎると、青い山々や斜面に広がるだんだん畑の美しさに何度も息を飲む。まだ出会って間もない現地の方のバイクにまたがっているのに気付いた刹那、僕は妙に新鮮な思いがして、なんだかおかしい。高原の清々しい風が僕の頬を撫でるように吹いていた。
賑わいを感じたければ市場へ。大量に積まれた野菜、生々しい肉売り場、商売人と買い物客たちがこれでもかと、ごった返し、これまで何度も見てきた、息もむせぶようなアジアの熱気にはのいつも圧倒されながら元気をもらえそうな気もする。
ダラットでは「キャニオニング」というスポーツに参加。川の上流で、滝をロープをつたって下ったり、落ちたり、流されたり(!)する非常にエクストリームな遊び。参加者は多いし、ガイドがいるので事故は少ないと思うのだが、10m落差の滝をロープで下るのは無論恐怖だし、何より水が冷たくて、終始寒さに震えていた。感想としては「楽しかった」よりは「生きて帰ってきた」の印象の方が強い。ガイドの説明は英語なのでご注意を、参加者もほぼ欧米人です。
次から次へと新しい魅力を見つけてしまうものだから、滞在は長引いて1週間となった。滞在していたゲストハウスに関しては、自転車を走らせながら適当に宿を探している際、バイクに乗った女性が走りながら宿の勧誘をしてきた。ベトナムの人はバイクで併走しながら話しかけてくる。話半分で聞くと宿泊代は安く($4くらい)宿の名刺もあり、その女性も怪しい感じは無く、最終的には泊まることにしたが結果正解だった。「DARAT GREEN HOSTEL」という街から坂をずっと登り、住宅街の中にある家族経営の小さな宿では、子供たちと遊んだり食事もご一緒させていただき、ドミトリーの部屋には1週間ほぼ僕一人だけだったけど、おかげで温かく過ごさせてもらった。
次回はダラットから「幻のコーヒー」を探して旅に出ます。