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一国の奥行きの深さを知る

僕はあまり観光にやる気がない方かと思う。自転車に乗ってるだけで十分色んな楽しみがあるし、なーんでもないところの写真を撮ったり、コーヒー巡りをしているだけで十分楽しい。そりゃあ気が向けばもちろん観光します。でも気が向かなければその街のランドマーク的観光スポットでも「まあいいか。」と思ったらそこに行かずして、その辺の喫茶店でコーヒー飲んで適当に街をブラブラ過ごして次の街へと出発する。その街に1カ所でも好きな場所を見つけることができたら、僕はその街に来てよかったと思うのである。

フエには5日滞在した。フエは昔の王宮があった場所で、日本で言えば京都みたいな役割をしていた街である。旧市街地の真ん中には昔の王宮が残っており、この街の最重要観光スポットであるが、僕はそこに向かってみたものの入口がどこかよく分からなかったのと、入場料がけっこう高いな(といって500円くらいですが)と思い、目の前にして帰り、ダラダラと何をするでもなく過ごしたのであった。

そのフエから移動して2日後、ドンホイという街にやってきた。この街から西へいくばくか離れた場所に「フォンニャ洞窟」という世界遺産の洞窟があるらしいのだ。フエで泊まっていた宿からもバスのツアーが出ていて、参加してきた日本人から「へえ~。」っと興味が沸かず適当に聞いていた。ドンホイに近づいたころ、フエの宿主から「どうしてる?」って電話があった。すると「ドンホイに行ったらフォンニャ洞窟は絶対行った方がいいよ!」と勧められ、「そ、そうすか?」と初めて関心を持ったのである。結局フォンニャ洞窟には行ってみたのだが、これがとても素晴らしかった。詳細は後で話すとして、僕は今までこうして数々の見どころを見逃してきたのではなかろうか?とも一瞬思ったが、あくせくと忙しく名所旧跡を周るより、コーヒー飲んで空想にふけっている方が僕にとっては合ってる気がしてならない。これからも感じた時のみ動き、多くの名所を見逃して、街のコーヒー情報だけに詳しくなる旅になるだろう。

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えっと、ということで今回はフォンニャ洞窟とドンホイの街について紹介したいのだ。なんでこんな前フリが長くなってしまったのだろう。 フォンニャ洞窟へはバスでツアーに参加するのが一番手っ取り早いが、僕は宿で知り合ったスペイン人のバイクの後ろにのっけてもらいそこに向かうことになった。細かいことまで書ききれないが、そのスペイン人の話す英語は僕にとってはとても早口で、ゆっくりしゃべってもらってもなぜだか理解が難しく、イイ加減むこうもイライラしているように見え、僕はすっかり萎縮してしまった。スペイン人の他にも欧米人達と同行することがあり、彼らはみんな英語が話せるので仲良くやっていたが、自信を失った僕は一人でダンマリと肩身狭く過ごす時間が多く、「オマケの人」のような気がしてさみしい思いもしていた。

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それでもここに連れてきてもらって本当に良かった。フォンニャ地域に近づくとこの辺りの地形の特徴であるが、田園地帯にまるで宙から降って来たような、絵にかいたような「山」がゴロゴロと視界の中に現れ、ベトナムではなく中国の奥地にやってきたかのようでもある。最初に見たのは「パラダイス洞窟」であった。一人でダンマリとつまらなさそうにここまでやってきたが、洞窟内に入るなりそんなことは忘れるほどの興奮を覚えた。今まで見てきた洞窟とは比べものにならないくらいの圧倒的な巨大な空間がそこには広がっていた。そして想像も出来ないほど長い年月をかけて形成されたであろう鍾乳石の横綱スケールのものが、あそこにも、そこにもドドーン!ドドーン!とそびえている。稚拙な感想であるが、子供の時に遊んだテレビゲームの中の「ダンジョン」に入り込んだような壮大な世界がそこにはあった。

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続いて「フォンニャ洞窟」も見学したのだが、洞窟の素晴らしさは言うまでもない。「パラダイス」と違う点は、洞窟にいたるまでに川を船で移動していくのだが、この船から見える風景にある。そこには川辺に住む人たちの生活や川漁の様子がうかがえ、その後ろにはあの「お伽話の山々」が静かに佇んでいて、僕はこの風景にすっかり魅了された。

英語の会話に自信を失っていた僕であるが、少しは欧米人達と絡み、帰り道にはラファエルとも少し話すことができた。怒っているわけではないようでホッとする。僕の理解力はあいかわらず情けなかったけど、最初より少しだけ意思の疎通が出来ただろうか。話したいことはたっくさんあるのに、日本語を話すように英語が出来たらどれだけ素晴らしいだろうか。きっとこの旅の間に彼らとの「壁」が低くなるよう努力したい。でもそれに至るまでには今回のような経験がこれからも続くのだろう、でもそこから逃げずに根気強くやっていくことが大切なんやろうな、まあ口で言うのはたやすいことだが。

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ドンホイの街についても少し。ベトナムでは比較的静かな港町であるドンホイ。漁港にはカラフルな漁船が数隻停泊されていて、キレイに整備されて遊歩道を散歩したりカフェでゆっくりしたり。泊まった宿は相部屋で1泊5ドルの「Buffaro Pub & Hostel」宿泊客はアジア人は僕一人で他全て欧米人。1階のパブは英語地獄と化し、僕は一人でちっちゃく飲んでいたが、英語のしゃべれる地元ベトナム人やフレンドリーなスタッフさん達が僕に絡んできてくれたおかげで、なんだかんだと楽しくさせていただいた。

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宿から100mほど歩いた場所には「Tree Hugger Cafe」がある。ベトナムでたくさんのカフェに入ったが、個人でやってるカフェでは1番インテリアのセンスについて僕の好みにハマり、とても居心地に良い時間を過ごすことが出来た。

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教えられなかったら通過していたであろうドンホイという街。2カ月もこの国にいて、あとはハノイに着けばそれで十分と思っていたが、フォンニャのようにド肝抜かれるような風景に今頃再び出会えるとは思ってもみなかった。きっとまだ知らぬ風景がこの国にはたくさんあるだろう。それは日本だって同じだ。日本を一周したってまだまだ行ったことのない場所だらけだし、四季を通じて同じ場所でもまるで異なるだろうし、見た目だけでなく、文化や歴史、見方を変えて掘り下げていけば、無限にその世界は広がっていくのかもしれない。何千年とかけて人が築いてきた文化を、何億年と重ねてきたその大地を1カ月や2カ月で知った気になったなんてたわけなことだ。かといって旅行ばかりしていられないし、全てを知ることに意味があるわけでもないのだが、僕は未だ知らなかった一端に触れたことで、一つの国に眠る奥行の深さに気付くことが出来たのだ。

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