いつか、また。
ハノイについてからの4日間について。泊まった宿に関してはバンコク、ホーチミンでもお世話になった「EZSTAY」という日本人宿がハノイにもあり、値段は相部屋1泊10ドルと少し高めだが、頑張って走ってきたご褒美に言葉の通じる安らぎくらいの贅沢は与えてもよかろう。結果やはりこの宿に泊まったのは正解だったと言える。
この旅で気付いたことがある。それは僕は案外「街」が好きだということだ。僕は将来的に大阪ではなく、ちょっとした田舎で定住したいという夢見がちなことを考えていたのですが、この旅でことごとく長居してきたのは田舎ではなく街であった。単純明快に店がたくさんあり、飲み食いの選択肢が増えることと、活気あふれるアジアの街はいつも僕にインスピレーションをもたらしてくれる。
ベトナムの首都・ハノイでも街歩きを少しは楽しみたいと思っていたが、結局それは叶わなかった。なぜなら次の目的地であるフィリピンに向けてやることが山積みであった。前半の2日はホームページの更新に充てた。そんなこと後からでも良さそうなものだが、その時感じた細やかな感情などは鮮度の高いうちに書いてしまわないともったいないし、記録的な内容になってしまう。そして残りの2日、やるべきことをTODOリストと称してメモに書いて終わった項目を消していく。まずこの3カ月半で天寿をまっとうした道具の買い替え、そしていつのまにか無くなってしまった小物の調達に奔走した。日本であればここにいけばこれが手に入るというのが分かるけど、異国の地でそれをやるのはなかなかの手さぐりで、おまけにヒット率が低い。例えばデータの記録用にDVDディスクが欲しかったが、DVDデッキが置いてある店で、DVDのディスクが置いてないといったことがあったり、店員も英語があまり使えなかったりで無駄足を使うことが多少なりあった。
(上:地獄の輪行作業にもう無理っすの図)
(下:久々の日本のカレーライスに狂喜乱舞の図)
買い出しで街に繰り出す中で、ハノイの街の中に何度もシャッターを切りたい場面を見かけたが、僕が反応する風景にはいつも人がいて、納得する構図で撮るにはグッと寄る必要があったが、これをやるのは精神的に余裕がなくてはならない。いっこうに減らないTODOリストを抱えた僕にはそんな余裕はなく、撮りたい気持ちを押さえて「最後には少し時間があるはずだ。」と自分をさとしながら、結局最後まで散策に時間を充てることは出来なかったのである。この忙しさは旅に発つまでの日本での地獄の1週間が再来したかのようだった。宿のみんなが一緒に出掛けたり、飲みに行っているのを見送って僕は一人買い出しに行ったり、宿で作業している時はさみしかった。
しかしそんな中でも宿に来る個性的な旅人たちのおかげで楽しい時間を過ごさせてもらうことも出来た。中でも春休みを使ってベトナムにやってきた高校生の小宮くんという青年について。高校生が単独で海外に来ているだけでもすごいが、その目的はさらに驚くべきことで、彼は無類の釣り好きであるのだが、ベトナムのハノイにしかいない?という珍魚を釣りにきたいがためにわざわざここまでやって来たというのである。彼は普通の釣りに飽き足らず、アブノーマルともいえる「怪魚釣り」が好みであり、過去には香港で、ハノイは今回が2回目で前回釣れなかったリベンジで訪れたというのだからこれぞ本当の釣りバカというものである。そんな変わった趣味を持ち、また高校生にして驚くべき行動力を持つ彼だが、性格はいたって温厚な好青年である。僕にとって、すでに大学生だと若くて話が合わない時があるが、彼とはわけ隔てなく話すことができる。精神年齢がとても高いのだろう。僕が一人で作業している時も彼はよく「終わりそうですか?」と声をかけてくれるので少しはさみしさもやわらいだ。また彼が釣ってきた魚(結局今回も目当ての魚は釣れなかったようだ。)は宿のスタッフさん達が調理して、僕は手間なく、毎日美味しい魚料理をタダでいただいていたのだ(皿くらいは洗ってましたよ)。
(上:ナマズの肝とパイナップルの炒め物)
(下:宿では自炊ばかりしていた。朝飯のフレンチトースト)
しかしやはりハノイを写真に撮ることが出来なかったのは心残りだし、現地の人との関わりも少なかった。しかしここにはもう一度戻ってくるだろう。仲良くなったベトナム人のバリスタさんがハノイで来年店を開くらしいし、今回行くことが出来なかったハノイから北の山岳地域の少数民族や棚田の写真を撮りに行きたい、もちろんその時はハノイの街もゆっくりと歩いてみたい。ベトナムには2カ月と10日もいて、楽しいことだけでなく、文化の違いに戸惑うことも多少なりあったが、この国の自然に幾度も感動し、多くの現地の方々の親切と楽しくさせてもらった思い出は忘れない。この旅では一度お別れだが、ベトナムにはまた帰ってくる、その時はもっとベトナム語を勉強して。さらばベトナム、そしてまたいつか。
(↑ハノイではありませんが、未公開のベトナムでの写真を少し)
ちなみに小宮君はハノイを出た後、沖縄に寄ってから地元に帰ったそうである。
「釣果はどうやった?」とメールすると、「大漁です!」という返事とともにこんな写真も添付されていた。
うーん、すごいなあ。