歌え、愛の讃歌。
「君の好きな日にちだけいて、この辺りを楽しめばいい。」 フランスはアヌシーという静かな湖沿いの街に住む友達オリビエ&アリアの家に僕は居候させてもらっている。このような有難い言葉をいただいていたのだけど、この家の飼い猫2匹のうち1匹の調子が良くないようで、アリアはとても心配していた。かなり高齢で体力がかなり落ちてきてるとのこと。動物病院に連れていったり、心配そうな2人の表情を見ていると「これはマズイ時に来ちゃったかも?」と思わなくもない。 「あのーややこしかったら僕いつでもこの家出発できるからね?」と言ってみたけど、「大丈夫!大丈夫!」と返された。猫ちゃん元気になったかな?またメールしてみないと。
「モンブランって見れる?」 そう2人に聞いてみると、自転車で行くには遠いけど、電車を使えば可能だと。登山用具(今回はトレッキングするだけ)は一切持ち合わせてない僕に何から何まで貸していただき、さらには電車のタイムテーブル、トレッキングルートの提案、行きしなの「シェアカー」の手配と、なーんにも分かってない僕に至れり尽くせり用意してくれた。感謝。 行きしなは「シェアカー」という一般人の車の空きスペースに運賃を支払い乗せてもらうという方法で向かうことに。ヒッチハイクではない、シェアカー専門のサイトで予約し、料金もクレジット払い(フランス語なので全部アリアが手配してくれた)もう僕は言われるがままに乗るだけで、低価格で簡単にモンブランの麓の街・シャモニーに到着してしまった。目的のロープウェーの下までサービスで運んでくれた運転手の爽やかな兄ちゃん2人に有難うとご挨拶。降り立ったその地の透明度高い清らかな朝の空気の中、見上げれば雲一つない紺碧の空をバックにアルプスの白い峰々が高く、高く僕の上にそびえていた。もう僕の下手な言葉遊びなんて不要。あとは写真でご覧下さい。
フランスをイメージする曲といえば僕の中では圧倒的に「愛の」なのですが、この曲はパリに着いた時に歌おうと思っていました。しかしこの日の美しすぎる自然の風景を見て、今歌わずにいつ歌うのよ。と言わんばかりに、歌いましたね。いや、周り誰もおらん場所やと思ったんですよ。けっこう大きい声で、そーらー気持ちよかったですねー。歌ってから振り返ったら、向こうの方に登山客が3人くらい見えたりして、アチャー絶対聴かれてますやんか、てゆうか僕のいた場所のもう少し下にある湖沿いのレストランあたりまで響いていたことでしょう。ああ、恥ずかしい・・。
ちなみに僕はモンブランとは向かいの山なみの方をトレッキングしていました。モンブランはマッターホルンのように特徴的なシェイプをしていないので、どれがモンブランと自信を持って言うことは出来ません。たぶん写真のどこかに写っている・・・かもしれません。
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ちなみに「愛の讃歌」はご存知エディット・ピアフがオリジナルですが、僕が歌ったのは日本のギタリスト・長谷川きよしさんが歌う日本語とフランス語が入り交ざったものです。僕は音楽が好きで色んなジャンル・国・年代のものをこれまで試してきましたが、これまでの人生で2回体に電撃が走るような音楽体験をしたことがあります。1回目は高校2年生の時にCDショップからレンタルして聞いたジェームズ・ブラウンの「パパズ・ゴット・ア・ブランニュー・バッグ」でした。そして2回目は初めてのJB体験から7年ほど経ったころ、実家の祖母がたまたま見ていた「NHK歌謡ショー」的な基本演歌づくしの番組に長谷川さんが出演されていたのです。その時まで僕は長谷川さんの存在自体知りませんでした。演奏が始まった瞬間まるで時が止まったようでした。演奏が終わるまでの間、僕のいた空間は、ただギターと、声と、長谷川きよしの魂だけが存在していたようなのです。拍手の音が聞こえてから、体の力が抜け、ただ「すげえ・・・。」という言葉だけ出てきました。ずいぶん前から活躍されていた方のようで、なぜ今まで知らなったのだと後悔。それからはすっかり「ハセキヨ」ファンに。バーデン・パウエルのような繊細で時に情熱的でリズミカル、サウダージのような郷愁を感じさせるギター、そして魂あふれるかっこよすぎる歌声。あれからCDを買い、「愛の讃歌」を聴いたのですが、素晴らしいけどどうもあの時の感動には叶わない。するとある時YOUTUBEで見つけたEMIが提供している長谷川さんの同曲の動画を見つけました。これがまさに初めてあの演奏に出会った時の空気感そのものでした。まるで目の前にご本人がいらっしゃるような気がするのです。音楽ってすごい、録音ってすごい。ちょっと旅と関係なく、熱く語ってしまいましたが、もしご興味ある方はYOUTUBEで、周りの音をシャットダウンして、パソコンのスピーカーではなく、安物でもいいので、イヤホン・ヘッドホンで聴いてみて下さい。