お邪魔します、お宅訪問。
ヨーロッパを発つフライトまでいよいよ10日ほどに迫っているが、これから2人の知人の家を訪ねる予定となっている。ちなみに飛行機はデユッセルドルフという街から飛ぶ段取りとなっているのだが、デュッセルまで今いるフライブルグから自転車でははっきり言って全然間に合わない。前述の用事もあり、ヨーロッパ旅では常套手段となっている電車輪行をいとわないことを手を高く挙げてここに宣誓します。(それはもう高校球児のような爽やかさで)
というわけで一人目の知り合いの住むムルルハルトという田舎街へと向かったのだが、やはりアヌシー同様ノット・イージーな展開が待ち受けていた。計4回にもわたる電車の乗り換え、駅前のバス停で野宿、翌日家を数度訪ねるも不在、今回もアカンは思いつつ、寝不足でフラフラの体でたどり着いたキャンプ場に着いてからやっと向こうと連絡がとれ、その日の夕方に無事再会とあいなった。あーしんど。ドリスさんは僕より一回りも年上の女性で、イタリアのシエナのキャンプ場にいた際、フル装備の自転車を押していた僕を見るなり「私も若い頃同じことしてたの。ドイツに来たらいらっしゃい。」と彼女は言った。たった1分くらいの会話で「うちに来なさい。」と簡単には言えませんよ。とはいえホイホイとお世話になりにくるアナタの図々しさもアレですけどね・・。
話は少し戻り、野宿した翌朝、ドリスさんと連絡が着くまでの間に僕はムルルハルトの街を散歩していた。ムルルハルトは南ドイツに位置し、なだらかな丘や山に囲まれた小さな田舎町。この辺りの伝統的な建築様式なのか、網目模様のオモチャのような家が可愛らしい。観光客でゴミゴミしてなく、歩いて十分周れるサイズ感が移動疲れの僕には心地良かった。街からキャンプ場までの道のりは、原っぱの青々とした草の上を初夏の風が駆け、そよそよと揺れていた。
さて無事に再会をすることが出来たドリスさん宅へお邪魔させていただくことに。旦那さんと息子さんの3人暮らし。人がどんな部屋で、どんな道具を使い、どのような暮らしをしているのかは僕にとってはとても興味深いものだ。ましてや外国の一般のお宅に入らせてもらうことなど、人生でもそうないことだろう。ドリスさんのお宅はモダンでかつナチュラルなインテリアはまさに僕好みの空間だった。その日の晩御飯にはズッキーニとトマトをオリーブオイルで炒めたものに、羊のチーズを合わせたもの。ドイツパンのスライスと、ドイツビールでいただきます。
夕食後、車で近くまでドライブし、暮れなずむ空の畑の道を散歩。僕はもう1泊させていただけるそうなのですが、ドリスさんは翌日友人たちと数日ハイキングに行かれるそうで、翌朝にお別れの言葉を言った。初めてイタリアでドリスさんと会った時は、ほんの1、2分話しただけ。今回ゆっくりと話す機会を持って、ドリスさんはハツラツとしていながらも、穏やかで温かく、もっとたくさん話してみたい、時を共に過ごしたいと思わせてくれる素敵な方でした。出会わなければ、このムルルハルトという街の名前を知ることも無かったであろう、ただただ感謝の思いである。
ムルルハルト滞在記、もう少し続きます。