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赤と白に漬かること1カ月【後編】


さて、職場では「シークレットサンタ」というイベントがありました。平たく言えばプレゼント交換なのですが、クジを引いてそこに書かれてある名前のスタッフに10$相当の「価値ある」プレゼントを用意して、後日その人の元にプレゼントが渡され、もらった人は誰からのプレゼントか知らないので「シークレットサンタ」という、NZではティピカルなクリスマスカルチャーなんだそう。交換日当日、僕が手渡された紙袋に入っていたのはなんと!ポケットサイズの英英辞書とOREOのクッキー。大学ノートをちぎった紙には「サンタ」からのメッセージが添えられていた。

「メリークリスマス、ユースケ。サンタは、君が英語を上達したいと思ってることを知っているよ。だからサンタは大きな希望を抱いた、小さなプレゼントを君にあげよう。それは君が新しい言葉を覚えるのに多いな助けになるはずだ。エンジョイ・ユア・クリスマス」

紙袋から辞書とクッキーを見つけた際、最初抱いた感想としては「な、なんて身につまされるプレゼント・・。」だけならまだしも、少しだけ「安っぽくない?」と最低なことを考えた自分が情けない。しかし今はそうでなく、なんて価値あるものを与えてくれたのであろうと、感謝している。それは実際僕が英語を上達させたいと思っているからだけでなく、送り主が僕のパーソナリティーを考慮して選んでくれたことに感激した。その送り主はチャーチの大学に通いながら同じカフェで働くインド人の女の子で、彼女は今こそネイティブと同じペースで英会話が出来るが、カフェで働き始めた当初はそうでなかったという話を職場のボスから聞いたことがある。だからこそ言葉で苦労する気持ちが分かるのだろう(職場で英語がヘタクソなのは間違いなく僕一人です)。偶然かそういう仕組みなのか定かではないが、僕はその彼女にプレゼントをあげている。「価値あるもの」を10$相当で探すのは難しく、僕の買ったものは大幅に予算を超えて、確かに華やかな内容であったが、その子のパーソナリティーを考慮したかと言えばそうでなかったかもしれない。ただなんとなく「これで格好がつくだろう」という気持ちで選んでいたと思う。見事10$前後で確かに「価値ある」ものを提供したインドの彼女は、明確に企画の意図を捉えるクレバーな頭脳の持ち主であると同時に、一番に彼女の優しさがあっからてこそだろう。付き合いの少ない人に"This is exactly what I wanted!"(これはまさに私が欲しかったもの!)をドンピシャに用意するなんて難しい。でも相手のことをよく想像することは金額以上の喜びをもたらすことだってある。この企画以外でも何人かの人に向けてプレゼント買う機会があったけど、また一ついい勉強をした気がしてます。

(職場の近くの教会横にある掲示板。最初は不規則な数字とまばらに絵が張ってあってなんだろう?と思っていたら、どうやらその日付けごとに子供たちのクリスマスの絵が張られていくというものでした。なかなかアーティスティックでデザイン性に優れた作品もあり侮れない。)

さてクリスマス当日となりました。クリスマスと26日”ボクシングデー”はNZでは公共の休日。小さな店はもちろんスーパーやショッピングモールでさえ軒並みシャッターが閉まり街の道路は閑散としています。24日イブには"Have a nice Christmas."と常連のお客さんや同僚たちで言い合い、それはまるで日本人が年末に「良いお年を。」と言うのと同じだ。日本がクリスマスで盛り上がっているのは、商売人と子供とカップルであるが、こちらでは家族や親戚、友達が集まり一緒に過ごすというのが定例で、欧米圏のクリスマスというのは日本でいう正月のようなものだろう。あとNZは南半球なのでTシャツで浜辺でバーベキューというのも典型的な楽しみ方だそうです。

定休日なしの僕の職場が一年で一度だけ休むのがこの2日間で(年末年始は働きづめの予定・・)、25日クリスマス当日は一緒に住んでいる家族の、お友達のお家でのパーティーにお呼ばれさせていただきました。そのお家のKIWIである旦那さんは料理が得意で、オシャレな盛り付けの前菜とスパークリングワインから始まり、野菜を丸ごとローストベジタブル、ターキー(七面鳥)・ラム・ハムなどのド迫力の料理が次から次へと出るわ出るわ。極めつけには娘さん作のNZのティピカルなクリスマスケーキが2種。一つは「パブロワ」と呼ばれるメレンゲと砂糖を固めた土台にクリームとフルーツがのったもの。もう一つは「プディング」という名で、これはプリンではなくドライフルーツが入ったどっしり系のケーキ。ちなみにこういったパーティーってのは、みんなで料理など持ち寄ることが多いらしく、僕はコーヒーと糠漬け(マジか)で貢献させていただきました。

あれこれと書きましたが、クリスマスだからみんなハッピー!というわけでもないそうで、12月になると統計的に家庭内暴力が増えるのだそうです。日本よりものびのびと自由に生きているようにも見えるNZですが、貧困な家庭の割合は先進国の中でも多い方らしく、アルコール中毒などで働かず生活保護で暮らしている家庭もあり、そういったところでは子供にクリスマスプレゼントが行きわたらないことだってあるわけです。

キリンジの曲にサンタの憂鬱を歌った「千年紀末に降る雪は」があります。今年いい思いを出来なかった誰かが、きっと来年温かな思いを出来ることを小さく願おう。


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