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俺にもSUMMERがやって来た【前編】


5カ月前挑み、敗れたあの場所へ、今再び。

クライストチャーチから南へ向かってそう遠くない場所にAkaroaアカロアという小さな港町がある。昔フランス人の入植者が多く住んでいたことで今も街にはその名残が感じられ、また穏やかな内海と山に囲まれた風光明媚な景観に多くのツーリストが好んで訪れるといいます。昨年の9月、僕はこの港町を目指してチャーチから約80kmの道のりを自転車で攻略しようと試みたのですが、タイトなスケジュールと、出発時間の遅れ、そもそも計画性の低さが相まって、アカロアまで残り30kmを残して無念の途中リタイアを与儀なくされたのです。

それから時は経ち5カ月。そろそろアイツにリベンジを果たす時がやって来た。前回は日帰りという無茶なプランだったし、例え向こうに着けたとしても町を楽しむ余裕も無かっただろう。今回は1泊で、自転車をこぐ時間をしっかり確保してるからきっと大丈夫、のはず。 前回と同様、往復自転車をこぐつもりはない。今回は行き道をバスで輪行し、アカロアからチャーチまでの道のりを自転車で走ることに。前回も利用させてもらった「French Connection」さんにお世話になる。事前に頼めば$10追加で自転車を分解せずに積むことが出来て非常に楽(運賃は片道$25)。バスの車内では初老のドライバーがクライストチャーチやアカロアの歴史などについて調子良く喋り続け、薄茶色の牧草と羊たちだけが窓の外を流れているのを腑抜けた頭で僕は見つめていた。

かくして僕はいとも簡単にアカロアにたどり着く。お昼12時、何はともあれまずは宿泊先のバックパッカーズへ荷物を預けに行く。今回キャンプをするか迷ったが、キャンプサイトは安くなかったし、その辺での野宿は翌々日の仕事に響きそうな気もしたので、今回は「大人の選択」をしたという訳だ。"Chez la Mer Backpackers"は可愛らしいピンク色の木造建築の外観に、中庭の憩いスペースは花と緑に囲まれた美しく心地よい空間が広がっていた。自炊や洗濯も出来るし、レンタルの自転車や釣り竿など、もし僕が長旅の途中で立ち寄ったならほぼ確実に長居してしまいそうなある意味で危ない、素晴らしい宿であった。

旅1日目の今日は自転車を控えてトレッキングにいそしもうか。デイパックに必要な荷物を積めたら、インフォメーションでトレッキングマップを手に入れていざ山へ。手入れされた庭の花々が美しい住宅街を歩き、そこを抜けるとやがて僕の両側を林が囲んだ。最近ようやくセミの声を聞くようになったばかり。鳥は歌い、風が林の木々を撫でると、澄んだ針葉樹の香りが鼻孔をかすめ、こう思う。

「俺にもやっと夏がやって来た。」 空気をたくさん吸い込んで、また吐き出して。目の前に伸びる砂利道を僕は再び歩き出した。

頂上まで目指してみたかったが、明日のサイクリングに響いてはいけないので、キリの良さそうな所で元来た道を戻ることに。事実、下りは思った以上に足の筋力を必要としたので、明日筋肉痛にならないか少し心配である。引き返した場所から望んだ景色は、折り重なる丘の緑とアカロアの蒼い内海。そうそう、こういう景色が見たかったのだ。

下山してカフェでコーヒータイムを挟んだ後、スイミング、フィッシュ&チップスを食べながらの夕日鑑賞、暗くなってからの星空撮影とタイトに遊ぶ、遊ぶ。星空を見に行く時、宿の憩いスペースでは旅人たちが宴で盛り上がっていて、参加しても楽しそうだなと生唾を飲みこんだが、こういう旅はまたいずれ出来るので、自分のやりたいことを優先させた。半日遊び呆けて、寝たのは夜の12時すぎ、明日が本番ってのに動けるのか、俺?

後半へ。


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