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なにはともあれ Good on you. Biking in NZ 11


自然の中で眠りにつくのが本来のキャンプの本質であるとしたら、残念ながらここはそうではなかった。唯一の慰みとばかりに、近くにリンゴの木が生えていて、一つが5cmほどの真っ赤な実を「たわわ」にぶら下げていた。一つもぎって味見すると、口の中に酸味と甘みがジュワッと広がり、それは大そう美味であった。思い通りの素敵な夜を過ごせなかった変わりにと、その小さなリンゴを10コもぎってカバンに詰めた。

ちなみに植わってるリンゴを勝手に食べていいかという議論について。僕の職場の、道を挟んで向かいの民家に桃の木が生えている。時は春、実がたわわに生っていた。車が一台横づけされ出てきたオジサンが、民家の塀から垂れる桃をもぎっては手持ちのビニール袋をいっぱいにしていた。同僚の子に「あれっていいの?」って聞いたら「うーん、敷地内はダメだけど、道に垂れてる分は大丈夫なんじゃない?」と。ちなみにそのオジサン、車に戻りながら味見したのが美味しかったのか、クルッと振り返って、また追加の「収穫」に戻るという一部始終がまるで漫画を見ているようで、同僚と笑っていた。

・・・というわけで、道端に生っているリンゴの実を数個いただくくらい、罰は当たらないだろう、、多分。

(真似されぬよう頼んます。)

Allowtownは「美しい街」と知り合いから聞いていたので、期待を胸に訪れたのだが、ツーリスト向けの土産物やレストランといった店ばかりで、建物は「古き良き」といった雰囲気を模しているのだが、いかんせん商業的な匂いしか感じられず、ガッカリ。喧騒を離れて、街の近くを流れる小川に来た。さっきとは打って変わって静かな雰囲気、川のせせらぎ、鳥の声、風の音。林は朝の光を通して柔らかい澄んだ空気に包まれていた。

街にしろ、キャンプ場にしろ、こういう静かで、周りの自然を生かしたものにすれば、もっと僕好みであったろうにと、そんなことを考えて川を見つめていた刹那、1匹の大きな犬が突然僕の周りに現れ、噛み付きそうな勢いで吠えたててくる!慌て、うろたえ、最悪噛まれる状況も考えた。すると飼い主のカップルがヒョコッと現れて、犬を呼び止め「ソーリー、ソーリー」と悪気も無さそうに僕に言った。こっちの人はリードを離して散歩させる人が多いとはいえ、獰猛な犬なら話は別だろう。今回は大人として文句の言葉は飲んでおいた。しばらく林の遊歩道を歩き、引き返して戻ろうとしたとき、さっきの犬連れカップルの姿が見えた。今度はリードをつけているようだから大丈夫だろう。狭くて人の多い日本で窮屈に買われている犬よりは、こっちの犬は幸せかもしれない。そんなことを考えて歩いていると、リードに繋がれていたはずのさっきの犬が駆けよってきて、再び僕に凄い剣幕で吠えたててきた。この度も飼い主に制されたが、相変わらず悪気が無さそうで、

「No way!(あり得ない!)」

と怒りの声を出した。あの阿保んだらカップルの犬は、どこかしこで知らない人を吠えているのだろう。彼らにペットを持つ資格などない。自然の綺麗な場所なんだけど、Allowtownは僕にははまらなかったようだ。今書きながら思ったけど、犬に吠えられたのはリンゴの罰なのだろうか。

(上:Allowtownの観光エリアから少し外れた場所にあった良い雰囲気の建物。こういう静けさの方が好み。

 下:帽子がへしゃげるほどカフェの中を覗き込んでいたオジサン。なんかええもんあった?)

この旅のゴールまでもうたった20km。晴れ渡った空の下、時々止まっては景色を眺め、ゆっくりとこぎ進めることしばらく、ある所から交通量が増え、街は非常に賑やかな様子。人で賑わうカフェのオープンテラスを抜けると、そのまま桟橋の端まで自転車を押し進めた。目の前には群青色のLake Wakatipu。Oamaruから旅を始めて半か月、僕は最終目的地のQueenstownにたどり着いた。なにはともあれ Good on you . (良かったね)なのである。

これで自転車の移動は終わりですが、旅はもう少し続きます。


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