君と僕の10年間 Biking in NZ Finale
Queenstownでの最終日。最後くらい街でのんびりやろうと思っていたが、昨日Milford Soundの素晴らしい道を見せつけられたからには、やっぱり最後まで自転車で遊び尽くしたい。
残された時間は少なく、アテもないけど湖の北側を西へ向けて走らせてみる。ちょっと街を離れて自転車を停めると、スカッと抜けた青空と群青のLake Wakatipuが広がっていて気分は上がる。このまま湖沿いを走らせて適当な所で引き返すつもりだったが、地図を見てみれば北に少し行くとLake Mokeという小さな湖があるようだ。ところがそこへ向かう道に侵入した瞬間から急勾配の坂が始まり、サイクリングは突如激しさを増した。あまりのきつさに30mごとに停まっては息を荒げて、吐き気さえ感じるほど。しかし同時に楽しくて笑っている自分がいる、体中の細胞が活性化して歓んでいるのを感じる。やはり僕は「自転車の人」なのだと改めて思う。
道はやがて未舗装に。両脇に山が迫り、これまでも見て来たNZの壮大な光景だ。やがて小さな池のようなものが現れると、どうやらそれがLake Mokeだったよう、思った以上に小さい。キャンプ客が数組確認出来るくらいで、聴こえる音は風と鳥くらい。草っぱらにゴロンっと寝転んでこの旅を振り返ってみる。今回はアジア、ヨーロッパと比べると3週間という短い期間。この旅のことを文字に起こすと大した出来事はないけど、旅した本人にとっては最初から最後まで毎日エンターテイメントに溢れ、1日1日がこれでもかというくらい濃くて充実していた。その理由を考えてみると、サイクルトレイルのAlps 2 Oceanを盛り込んだのは大正解だったし、NZの大自然が素晴らしいというのもあるけど、何より日本を出て言葉の通じない海外を旅し、外国で仕事を見つけ、働いてきたこれまでの経験値が、少なからずも自分自身を成熟させ、その下地が出来たからこそ、久々の自転車旅をより印象深いものしたのかもしれない。英語に関しては未だ納得できるレベルには程遠いけど、この旅で出会った人と会話をした中で、以前感じていた壁のようなものはだいぶ低くなっていた。そんなことをボヤボヤと考えていると、サンドフライ(小バエのような小さな虫で、噛まれると痛痒い)が周りをブンブンと飛んできたので、手で振り払い、街へ戻ることにした。
帰り道、後輪から変な音がするなと感じていると変速機の歯車が壊れていた。思えばこの時2016年4月、今のランドナーを買ってちょうど10年の節目を迎えていた。この10年でおそらく地球1周に近い距離(少なくとも半分の2万kmは悠に越えてる)をこの自転車は走っているかと思う。時には重たい荷物を載せられ、時にはガタガタの未舗装路を走らされ、散々無茶な使い方をしてきては、ゴメン!と思いながらもちゃんとついてきてくれた。とはいえ、ダボ穴はすでに二回折れたし(折れやすい場所ではあるだろうけど)経年劣化という言葉も実際表面化してくる時期には来たのかな?と思う。今これを書きながら、南米に向けて新たな発想を浮かべている、それはポジティブな思いで。この件についてはまた後日に記したい。
とにかく10年間ありがとう、そしてこれからもよろしくね。
(Queenstownを発つ前夜、深夜3時。テントの中に散乱する荷物を見てどこから手につけようか途方に暮れてる図)
翌日、夜も明けない午前4時に起きてパッキングとテント撤収を済ませて街のバス乗り場へ。窓の外を流れる景色を見ながら旅の終わりの感傷に浸る。この旅で3度目となる大きな虹がワイナリーのブドウ畑にかかっていた。突如バスが泊まると、道は大量の羊で溢れかえって車が身動きが取れない状況にも出くわした。本当に最後までエンターテイメントに尽きないね、ニュージーランドさん。
(今さらながらNZのワインが美味しいことに気付き、最近ちょくちょく嗜んでます。)
長々と続いたNZ自転車旅日記、お付き合いいただいてありがとうございました。今後しばらく、クライストチャーチの職場に復帰してからの生活のことを書き記しつつ、数か月後の南米旅に向けて少しずつ動き出していきたいと思います。