嫁でも探せばええやないかーお仕事7~10月目ー
前回のNZ自転車旅行記が長引いてしまったので、これまでひと月ごとに書いてきた「お仕事報告」を4カ月分まとめるという少々乱暴な手段に出ようと思います、さすがに細かいとこまで思い出せないもので。
前回の旅行に出る前にも記しましたが、あの時は仕事先でフラストレーションを溜めていました。欧州流れの人たちっていうのは、人生における仕事の有り方が日本人と根本的に異なる。とかくNZにおいては残業なんてものが少ないし、出来るだけ多くの余暇を作っては自分や家族・友人のために使うことが普通だ。1カ月という長期休暇を取るのも自然だし、自分や家族の体調が悪ければ仕事休んじゃうし、でもそれで国の需要供給が回っているなら素晴らしいではないですか?こちらにいると、日本ではあれだけ働かないと国が回らないのだろうか、同じ先進国なのになぜ、ああも時間にゆとりが無いのかと疑問に思う。(もちろんその仕事が好きなら異論はないけど)そんな気風があるからか、うちの職場では仕事中でもゆったりしている同僚の姿をよく見かける。彼らは忙しくなった時にはちゃんと動くのだ。切り替えが良いといえばそうだが、客足が落ち着いた後にはダラーンする同僚たちを横目に、典型的な日本人気質の僕は止まらずに少しでも仕事を見つけて動いてしまうわけ。動き続けることは嫌いではないのですが、その横でずっとおしゃべりに興じていたり、スマホで個人的なテキストやネットしてるのを見てると、どうしても人間なんで腹立つ時もあるわけですよ、アンフェアというかね。僕が動いてるのを察して「私も動かないと。」ともそうは思わないよう。このイライラにどう対処しようかあれこれ試行錯誤もしました。英語力は働き始めた当初に比べてずっと改善されていると思うが、やはり母国語を使うようにスラスラと出るわけではいので、人を動かすための発言が1秒か2秒遅れてしまうと、発すること自体を躊躇してしまい、結局は自分で動いた方が早くて、結果小さなストレスを貯めていくという悪循環。言葉がもっと出るなら、上手く周りを動かして、気も楽になるのだろう。では自分も彼らに合わせて暇ならリラックスしてみるのも良いけど、そうはやはり思わない。店に来てくれるお客さんのことが大好きだから少しでも彼らが心地よく時を過ごせるために気を払うし、やることなければ普段やらない場所の掃除をしたりする。自分の真実があれば周りと比べる必要もないのだけど、僕自身の器も広くなければ、感情の無いマシンでもないわけで、腹が立つ自分を自分で否定するのはもうやめた。でもやっぱり我慢ってのは一番よろしくない、そんな時こそ同僚たちと会話をすべきだし、ちょっとした会話で気持ちの流れは簡単に変わることが出来る。疲れたならエプロン外してトイレに行って5分ほど外の空気を吸えばスッキリする。郷に入れば~の言葉にもあるけど、仕事中の心のテンションを彼らに習って、もう少し緩やかにしてもよい。語学力を上げることも言うまでもなく助けになる。結局のところ、苛立つのは人のせいではなく、自分の考え方に引っかかるからだ。一応誤解ないよう言っておくが、他の業種も含めて働く人はバリバリ働くだろうし、「カフェ」という比較的なカジュアルな仕事だからこその職場の雰囲気なのかもしれない。
(↑ひと月だけ元のお家の事情で別のお家に引っ越してました。幸運なことに(?)別宅先でも猫がいて、奴のフワフワ具合と言ったらもう・・。家主は見た目通りのジェントルマンで心地よく過ごさせてもらった。ただいつも見ているTVはくだらないものばかりで、10秒に一回「〇ァック!」というセリフが出てくるコメディドラマを好んで毎日見て笑っていた。)
こう言っても、同僚みんなそれぞれに個性があって好きだし、リスペクトもしている。例えば、ある女の子は僕より10も年下で僕よりずっと後に入ってきたのに、僕を鼻で使って指示まで出してくるので、まあ正直イイ気分はしないのだけど、お客さんの顔・名前・頼むコーヒーの特徴(例えばLatte,2sug,trim,half shot,ex hotこれで一人のオーダーです)を1回聞いたら覚え、何十人の常連さんを認識しているのは、記憶力の悪い僕からすれば凄いこと。このように、その人の良いところを見つけては自分でも試してみることで、スキルも伸びる。人を嫌いになったらそれまでだけど、良いところを見つけたら見方も変わり、好きにもなれる。
(最近の空から何枚か。近頃はちょろっと雨が降って、すぐ止んで晴れて虹が出るというパターンが多い。星も綺麗で、毎日「南十字星」を眺める生活ともしばらくお別れと思うと少し寂しい。)
英語力に関して。3週間の自転車旅に行ってたくさんの人と会話したおかげで、帰ってまた仕事を始めてからも、以前より格段に同僚との会話の頻度が増えた。とはいえフレーズ・ボキャブラリー、リスニング、スピーキングも然り、まだ納得出来るレベルには達していないし、ネイティブの通常会話スピードにはまだ着いていけない。あの旅から帰ってからは、ポッドキャストのような、ネット上からダウンロード出来る無料の英語学習サイトを使って継続的に勉強している。日本で勉強しているのと違って、覚えたことがすぐに明日実践できる環境にいることは素晴らしいし、語学は話せたら話せるだけ楽しいので勉強もさほど苦ではない。旅先で少しコミュニケーションがとれるくらいの、また1年海外で働けるだけの語学力があればそれでいいと思っていたが、ここまで来たらもっと極めて一人で英語を使ったビジネスを出来るくらいにしたいとも思っている。
(「オイオイ、俺なんか撮ってどうすんだよ。俺はただのファーマーだぜ。」
とか言いつつ、カメラを向けたらこのポーズと表情、格好良すぎるでしょう。)
コーヒーに関して。僕がこの店ではほぼ一番というくらい安定感があって、美味しく、ミルクも極力無駄にせず、かつアートの種類の多さと美しさで一時期自信を持っていた。しかしある日、自分が飲むためにラテを淹れて、それから忙しくなり飲むことが出来ず10分ほど経ったころ見るとフォーム(泡)がほとんど崩壊していて、描いたアートは見る影も無くなっていた。淹れた当初は完璧と思っていても、持続性の無いフォームは良いコーヒーとは言えない。フォームとミルクとの一体感が長い時間で楽しめるのが、良いラテやフラットホワイトというものだろう。これをきっかけに自分のくだらない慢心に気付き、「自分のコーヒーは本当に美味しいのか?」と常に疑いをかけるようになった。どうすれば持続性の長いフォームを作れるのか、当然ミルクのスチーミングの技術が関係していることは言うまでも無く、これまで「鉄板」と自分の中で定めていたスチームノズルの位置を試行錯誤し始めた。同僚の何人かに自分のコーヒーを淹れてもらって、味わい、かつどのようにスチーミングをしているのか横から覗き、自分でも試し、検証する。ミルクも改めて温度計を使って、飲んで、心地よい温度を確認し、これは最終的にピッチャーに当てる手の感覚を再認識させるため。結果的には、ノズルの位置は最初の位置に戻した。1回のスチーミングの間にノズルとピッチャーの角度を微妙に変えたりしてるのが最近の話。穏やかに、同時に素早く泡立て、出来る限り長い時間を攪拌に充てるのは当たり前だが、やはり大切。ただ最近、フォームの持続性はスチーミングの技術に限らず、もしかするとコーヒー豆の特性や焙煎度、または焙煎してからの日数なども関係しているのではないかと思っている。というのも僕が良く通うお気に入りのカフェのコーヒーの淹れたては美味しいのだが、いつも10分くらいでフォームがなくなり、カフェオレみたいになってしまうことに気付く。これがどのバリスタが淹れても同じ結果なのだから、フォームの持続性が全てスチーミングだけに直結しているわけではないとも思うのだ。自分のコーヒーに話を戻すと、気にすることはスチーミングだけでなく、エスプレッソはベストなものを抽出出来ているのか、ベストなショットとはどのようなものか、抽出時間は?香りは?酸味や苦味のバランスは?研究することに限りは無い。
(↑店で作った自分のコーヒー。上手くスチーミング出来ていたら時間が経っても、飲み進めてもこうしてフォームとアートが残っている。)
「慢心」というのは本当にくだらないもので、成長を止める妨げにしかならない。いつでも自分の仕事を疑う・・とは言わないまでも、注意を払う、謙虚で慎ましくいること、常に理想を掲げていること。 野球のイチロー選手はこう言ったそうです。 「自分のしたことに人が評価を下す。それは自由ですけれども、それによって自分が惑わされたくないのです。」 これだけの世界最高峰のトッププレイヤーになっても、慢心にならずに、この慎ましさ。努力を辞さない姿勢、そして実際結果を出し続ける凄さ。1年海外のカフェでバリスタやっただけで何をイイ気分になってるのか、このすっとこどっこいは?もっともっと改善できるし、勉強することに限りは無いのだ。
(英語以外にコーヒーの勉強も。日本の書籍は実家の両親に頼んで送ってもらった、スンマヘン。全然関係ないけど最近ラーメン作りにハマっていて、豚骨を8時間煮たりするのでそれで休み1日終わったりします。アホですか?いえ、美味しいですよ。)
この文章を書いている時点で、今の職場で働くのがあとたった7日となってしまった。同僚やボスもそうだけど、穏やかで心優しいお客さんに支えられてここまでやって来れた。 「今日はあなたに会えて嬉しいわ。」 いつもSoy Moccaを頼むラブリーなお婆ちゃんは会うたびにこう言ってくれる。
また他の常連さんと話している際、もうすぐNZを出ることを言うと、 「戻ってくるの?ビザ延ばしてもらえないのか?なんならこっちで嫁探せばいいじゃん。」 というように「アンタおもろいから吉本入りや。」のノリで言ってくれる。
最終日まで彼らのために真面目で、笑って働きたい。