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これはただの敗走にあらず "Possibility of Next"


I tried to ride on "Challenging route".It was Lauca National Park located in Chile and near Bolovia. As a result,I couldn't ride completely and gave up at almost starting point because I felt lacked experience and courage to overcome there.

However,having a teatime and camping among beautiful montains and rare animals like Flamingo and Bicuña was absolutely amazing.And I visited one Hot Spring though,even average Japanese who love "Onsen" was blown away with it.That was proper temperture and comfortable.So that,I felt it was not "failure".I didn't complete ride,but it was worth just to visit here.

I felt neither don't need to try hard route where it's not for me nor stick boring route.When considering where to ride,it'd be better deciding with "Enjoyrable or not"

I've came back to Bolivia because there's one place should visit.It's where everyone wants to go.I'll show you next time.

今回挑むチャレンジルートはボリビア国境近くのチリ側にある。ラパスから南西の方角へ200km行き、国境を越えてチリへ入国、そこは「ラウカ自然国立公園」。標高4500m前後の木も生えない広大な大地には、美しい火山や湖、フラミンゴやビクーニャといった生き物が見られ、極めつけは「最高の天然温泉」があるという。ラパスを出ると、多くのサイクリストはつまらない幹線道路を走ってウユニ塩湖を目指すようだ。遠回りになるけど、この素晴らしい道は見逃せない。ただしこのラウカルートは集落がほぼ無く、たくさんの食料と水を用意せねばならず、さらに砂地の未舗装路と、生易しいものにあらず。ラウカルートの後は再びボリビアに再入国し、「塩地獄」と悪名高きコイパサ塩湖を越えて、かの有名なウユニ塩湖に至るという壮大にして厳しい道のりだ。マイナーなルートのため、英語含めて検索してもネット上にもなかなか情報が無い中、この道を走った知り合いのサイクリスト達から色々聞き出し、ようやく頭がクリアになってきた。このような厳しい道を一人で行くのは正直不安、しかも胃の調子も不安定とあったが、好奇心がわずかに勝ったようである。

国境まで自転車で行く予定だったが、ラパスで滞在が長引いたのと、雨季も近いのでスタート地点まではバスを利用することにした。Patacamayaまでは大型バスでたった30ボリ(500円)しかしPatacamayaから国境付近のSajamaへのミニバン(※注釈あり)に乗り換えようと値段を聞くと、同じ距離だというのになんと300ボリだと運転手は言う。あまりの暴利に一度断ったら200ボリにいきなり下がった。外人と見て、最初から吹っ掛けてきてるに違いない。150にならないか聞いたが、これは通らず最終的に180ボリ(3000円)で話がまとまった。僕だけのタクシーかと思えば、地元の人も一緒の乗り合いバス。地元の人が日常の足にこんな高い金額を払っているとは思えない。しかしこの時、値下げ後のこの高い金額さえおかしいとは気付けない程、僕の思考は止まっていた。これから自分が旅する道への不安で頭がいっぱいだったのだ。水や食料が途中で尽きないか、雨や雷に遭わないか、何かあっても誰も助けが来ないかもしれない。実際、道の途中で雨が降り、不安は増す。

(※Sajamaサハマ山はボリビア最高峰で、富士山のような美しいシェイプの単独峰。この辺りも温泉など見所ありです。もしラウカから自転車旅をスタートしたいなら、ラパス発アリカ行きの長距離バスで、チリ側に着いた時点で途中下車するよう運転手と交渉するか、乗り継ぎバスで行くなら国境付近、ボリビア側のTambo Quemadoは宿・レストラン・売店と全て揃ってます。)

車はSajama村に向かったが、舗装路を外れると予想以上に道路は酷い砂地で、明日の朝からこの酷い道で旅を始め、さらに人のいない場所へと突き進むのかと考えると、不安で手から汗が滲み始めた。村に到着したものの運転手に謝り、元来た道を戻ってもらった。やがて舗装路に戻った所で降ろされ、広い大地の中、一人ポツンと取り残された。冷たい風が轟轟と僕に吹き付け、夕陽は山の稜線に急いでいた。こんな風の中でキャンプは出来ない。宿のある村まで10km、急がねば。しかしその村まで傾斜は緩いものの登り坂、そして恐ろしい程の向かい風。最初の数kmはペダルを踏んでいたが、いよいよそれも出来なくなり、押して進む他無し。脇を巨大なトラックが物凄いスピードで通り過ぎ、とうとう陽も落ちてしまった。暗がりの中ライトの光を頼りに、風に抗い、鼻水をたらして、ただ自転車を押す。ずっと前から目指す村が見えてるのに、全然近づいてる気がしない。たった10kmの道のりというのに、なんて長いのだろう。暗闇と止まぬ暴風は、いとも簡単に僕の心を不安で満たした。この先のラウカの道は自分が思い描くような天国では無く、今の状況を越える地獄を見る可能性だってあるわけだ。フと家族の顔が浮かんだ。自分だけの命では無い、生きて日本に帰らねばならない。・・ラウカルートは諦めよう。その後走る予定だったもう一つのチャレンジルート「宝石の道」も止めた方がいい。

つらい道のりにも終わりは来る。Tambo Quemado村に着いた時には足がガクガクとしていた。宿のベッドに倒れ込み、手で顔を覆って何かを叫ぶ。しかし10分程してか、僕は意外なことを考え出す。

「まだフラミンゴもビクーニャも見ていない。地球離れしたボリビアンアンデスにも出会えてない。見たい、走りたい。まだ炎は消えていない。明日、もし気持ちが変わっていなければ、ラウカルート、行ってみてもいいんじゃないか?」

翌朝、僕は10ℓ近い水を買い込み、ラパスで買った食料と共に準備は整った。気持ちがブレそうなのを遮り、国境の峠に向かって僕は走り出した。

チリ入国。イミグレーションの建物を出ると、まず突き抜けるような青空の広さに驚いた。数km走ると、今回のチャレンジルートの入り口に差し掛かる。しかしいざその道に入った瞬間、愕然。予想以上に道は酷い砂地で、まともにペダルをこぐことさえ出来ない。後半さらに酷くなると聞いているのに、果たして一人で心折れず走破出来るのか?さらにこの時空腹で全く力が出なかったので、まずは食べて気持ちを落ち着けようと、ラパスで買ったインスタント麺のトマトパスタをこしらえた。これが、まあ美味しくないのだ。次の瞬間、僕は悟る。

「もうこれ以上は進めない。この挑戦はここで終わりだ。」

一番の不安な点は「食」だった。チリは入国時、食品の持ち込みに厳しく、野菜・果物・肉などの生鮮品は一切持ち込めない。さらにこのルート付近には食料を買える店は無いので、ボリビアから食料・水の全てを持ち込むのだが、パスタやインスタント麺・お菓子など乾きものに限られる。自転車旅において炭水化物は一番必要なエネルギー源だが、野菜やお肉もバランス良く摂らないと僕の場合、力が出ずにヘナヘナになってしまう。この食生活で5日間、ハードな道を乗り越えることが自信がまず無い。さらに、雨や雷、寒さ、水の補給など不安要素があり過ぎる。この道を一人で旅するために必要な度胸と経験が無いことを自分が一番分かっていたし、好奇心だけで突き通せるものではもはや無かった。命にかかわることだ、だからここでキッパリ止めるのが賢明な判断だと思われた。

「走ろう」と決めた道を前に屈するのは初めてだったので、非常に悔しく情けない。気持ちを落ち着けるために紅茶を淹れ、ボリビアから持ち込んだ、とっておきのカップケーキを頬張った。左には見事な美しさを誇るParinacotaパリナコタ山が、右では火山が静かに煙を上げている。・・こんな凄いロケーションで悠々とお茶している自分がなんだか可笑しい。夕暮れの時間を迎えると、パリナコタ山がゆっくりとピンク色に染まっていく様を見て、僕はこう感じた。

「これはただの敗走では無い。この美しい瞬間に立ち会えただけでも、ここに来た価値はあった。」

この日はビザの関係上、ボリビアには戻れないので、その場でキャンプをすることに。昨日の暴風はどこへやら。風も無く穏やかで、うっすらと雲のカーテンの隙間から星がソフトフォーカスのようにささやかに煌めいていた。

このルート上には3つの温泉スポットがあるという。その1つが片道たった9km先にあるようで、ボリビアに帰るまでに立ち寄ることにした。たった9kmといえど、砂地の道に悪戦苦闘。標高4500mを越えたアンデスの世界、現実離れしたその光景を表す言葉を僕は知らない。その手つかずの自然の中をフラミンゴやビクーニャ達が、悠々と生活を営んでいる。整備された幹線道路では味わえない魅力、いや魔力がここにはある。走りながら僕はこんなことを考えていた。

きっとこの道にまた帰ってくる。今度は「楽しめる準備」をして。ランドナーでこの道を走れないことは無いが、こういった未舗装の道にはファットバイクのような極太タイヤの自転車で行くのも面白い。贅沢品は切り捨て、最低限の衣食住の道具だけを持ち、「走ること」に重点を置いた仕様で望みたい。適さない装備で「苦しみながら」走ってもツライばかりだし、もったいない。今回は今の自転車と装備で「楽しめる」場所だけを走ればいい、今回行けなかった場所は「次回」に回せばいい。

なんかストンと心から納得出来た気がするな。まさか「次回」を考えるなんて、南米に来る前は想像すらしなかったけどね。

辿り着いた温泉スポットは、簡素な小屋がポツンと建っていて、中を覗くと、確かにそこには湯舟がある。手の先をそれに浸した瞬間、僕は興奮して急いで服を脱いだ。足先からゆっくりと浸かると、「ぅおぉ・・。」と思わず声が漏れた。これ以上も以下もない最高の温度。なんて、なんて気持ちがいいのだ。こんな素晴らしい温泉が何にもない山の中にあるなんて奇跡としか言いようがない!何度も浸かって休憩してを繰り返し、水着も要らない真っ裸で「本物の」温泉を一人心から満喫した。(ルート上には「世界最高」との評価もある別の温泉があるようだ、次回絶対訪れたい。)

失敗と思ったけど全然失敗じゃ無かった。確かに走破は出来なかったけど、大した苦労をせずに美味しいところだけ味わえたんじゃないか?ホクホクした気分でボリビアに再入国、そして頭はクリアになった。

分相応でない厳しいルートにチャレンジしなくていいし、逆につまらない幹線道路も走らなくて良い。旅の行先は、楽しめるかそうでないか "Enjoyable or Not" で決めれば良い。ド根性サイクリングは他の人に任せよう。例え自分の望む場所でも、自転車旅には苦労が必ず着いてくるし、そのエッセンスが旅をまたエスペシャルに彩ってくれることも知っている。

ボリビアに戻った理由は、ある場所だけはどうしても今回訪れたいから、また次回にご紹介出来ましょう。ボリビアの旅は思ったより早く終わりそう。その後は、僕が本当に旅をしたい場所「パタゴニア」が待っている。ワクワクが止まらない。

(今回の動画です。)


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