最果て村で穏やかな日々を Release myself
アウストラル街道はここオイギンス村で終点を迎える。ここからは道が無くなり、この先南下を進めるには湖を船で渡り、山道を越えてその先の村を目指すというもの(先の山道は車・バイク通行不可)。さて、現在大きな船が故障中で小さい船しか運航してないとのこと。船は毎日出るわけで無く、天候が悪ければ簡単に欠航になるらしい。実際僕は村に着いて予約してから船に乗るまで5日間待つこととなった。人口は少なく、村の産業といえば観光客相手の宿泊業か小売、牧畜といった感じか。晴れた日は長閑な雰囲気だが、曇った日にゃあのブルース感の最たるや。この何もない村で5日間も何して待てば良いのか途方に暮れそうなものだが、意外にもあっという間に過ぎていったのである。
泊まったキャンプ場が当たりだった。まだオープンしたてだから看板が無く、オーナーの男性が僕を見つけて話しかけてきて知った場所で、他のキャンプ場に比べてゴミゴミしてなく、林のピッチがとても美しい。アウストラル街道のキャンプ場は屋内の共用スペースが設けられていることが多いが、ここのコモンスペースは清潔で外の柔らかい光が差し込み、薪ストーブの熱を利用して料理やパンが焼ける。なぜかやってくる旅人は皆チリ人ばかりで、料理やお酒をシェアしながら怪しいスペイン語で彼らと会話を楽しんだ。
(伸び伸びと太陽の下で洗濯物を干せる。旅先ではこんな些細なことがとても幸せに感じることがある。)
村からアクセス出来るトレッキングルートがあり、なかなか標高をあげるけど、片道2時間程でたどり着く展望台からは村の全景、氷河有する山、ミルキーブルーの湖を一望出来、船待ちの時間潰しにオススメである。
南米の南部にはガウチョと呼ばれる牧畜で生計を立てているカウボーイのような人達がいて、アウストラル街道でも馬に乗り、犬を連れて牛を誘導する場面に時々遭遇する。運良くこの5日間のうちに村でガウチョのお祭りが開かれた。一人で祭りの行われる広場をウロウロしていると、クスコで知り合ったロシア人サイクリスト夫婦とバッタリ再会!彼らとはフィーリングが合うので、もう一度会いたいなとは思っていたところだった。一緒にお祭りを見ながらここまでのお互いの旅のよもやま話に華を咲かせるのだった。
他にはフライトの予約をしたり、ガソリンストーブを修理したり、ピザやうどんを作ってシェア飯したり、暇を持て余すかと思われたオイギンス滞在はあっという間に過ぎ去り、ハードなアウストラル街道を終えた後の良い休憩となった。 さあいよいよ船に乗って「過酷で美しい」と言われる国境越えに挑もうか。