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世界の果てにて思うこと "One Ending,One Starting"


この旅に出る前は、日本を出たことすら無く、パスポートを作ることから全ては始まった。「自転車世界一周」は、僕にはあまりにハードルが高ければ、そもそも自分の興味のある国だけ周れたら十分だった。東南アジア、ヨーロッパ、南米。行く前は分からないことばかりで不安を抱えていたし、この全てを満足に旅することが出来たらきっと奇跡だろうと感じていた。しかし多少の苦労はあれど、予定外のニュージーランドも加え、とうとう南米の旅も終わりに差し掛かろうとしている。

最終日の道は、進むめば進む程、周りの景色は美しく変わっていく。木々は紅葉し、雪山が遠くに見え始め、峠の上から見えた湖は鮮烈な蒼さと、湖を囲む森の緑に目を奪われた。何もない荒野の中を旅してきたというのに、終わりにこんな美しい自然を見れるとは嬉しい驚きだ。

いつ、どこを走ってる時も、頭の中ではボンヤリと「旅の終わり」について思いを馳せていた気がする。きっと多くの感動に包まれるのだろう、両手を天に翳して自分を祝福するのだ――と。そしてその瞬間を迎えた時の感情は意外にもアッサリしたものだった。

"Fin del Mundo" (世界の終わり)

その看板の前にたどり着き、近くを通った女性に声をかけて写真を撮ってもらった。

大きなことを達成した、というより今日も1日よく走ったなという感覚だった。素直にお祝いムードになれないのは、2日前犬に噛まれたショックをまだ引きずっているのと、これからの現実をどう生きていくかで頭がいっぱいだったからだろう。

「もうちょっと嬉しいもんやと思ってたけどな。」

喜べない自分に僕は少し戸惑っていた。

最終日の110kmは体にこたえた様で、翌朝目覚めるとベッドに針付けにされているような体のダルさを感じた。今日は1日ウシュアイアの観光に充てる。無理やり体をベッドから剥がし、魂を抜かれた風体でフラフラと街を歩く。フェリーで行くペンギンツアーも、船内では疲れてほとんど寝ていて、心にそれほど響くものも無く(ペンギンが確かに可愛かったけど)、その高いツアー料金だけが頭の中で何度もリフレインしていた。

あやふやな印象でウシュアイアを後にする。これからは怒涛の長距離移動。バスで半日かけてプンタ・アレナスに戻って1泊した後、5回の飛行機を乗り継ぎ、4日間かけてやっと日本に帰り着く。遠くに来てたんやなあと思う。

考えることが色々あって、今は素直に喜びを噛みしめることは出来ない。確かにこれからの人生基盤を作っていくことは大事だし、浮かれすぎるなよと、犬も僕に教えてくれたのかもしれない。

でもな、僕は2年間の旅でどれだけ豊かな経験をこなし、良い人たちばかりに恵まれ、美しい景色に囲まれてきたか、分かってる?今はまだボヤけて見えていないけど、いつかじんわりと思い出してはまた記憶の中で輝きを放つことと思う。

まずは命あって無事に帰ってきたことに感謝しようや。

日本に着くと、僕を待ち構えていたかのように、春の息吹と、満開の桜が出迎えてくれた。

ただいま、帰ってきました。

***

これにて旅の終わりまでを書き上げました。途中でパソコンが壊れ、パタゴニア編は帰国後、思い出しながら急ぎ足で書いたので誤字・脱字あるやもしれませんし、英文と旅した日付も書けずじまい。時間が出来たら修正していくつもりです。帰国後の話についてもまとまったらエピローグとして書きたいと思います。最後はスッキリとした終わりでは無かったかもしれませんが、この旅に出て本当に良かったと思いますし、私は今元気にやっているので大丈夫です。意外にも多くの方がこのブログを読んで下さっていたようで、この場を借りて感謝いたします。

☆2年間の旅を振り返る写真展を開催します☆

~世界と自転車とお茶の記憶~ 「本日も さすらい喫茶」 2018年5月31日~6月5日 公園前スペースいろは(大阪・昭和町駅近くのギャラリー)

詳細については次回お知らせします。


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